ドタバタSC初期メンカルテット。大和加入前。
――全校生徒にお知らせします。最終下校時刻になりました。校内に残っている生徒は速やかに下校してください。繰り返します。最終下校時刻になりました……
「もうそんな時間!?」
翔琉の肩が跳ね上がる。勢い良く部室の時計を見上げる。夜六時半。窓は施錠しているもののカーテンは全開のまま。真っ暗闇に落ちたガラスに映るのは自分たちのいる部室の蛍光灯と、驚いた翔琉と光牙の顔だけ。
「やべえ」
光牙もドタバタと席を立つ。座っていた椅子を部屋の隅に片付け、広げていた楽譜やペットボトルをかき集めてリュックに放り込む。
「帰るぞ」
入り口の扉の前では、カバンを肩にかけた優貴が無表情で壁のスイッチに手をかけている。
「やめてくれユーキ! 電気はまだ!」
翔琉が悲鳴を上げる。音楽雑誌にノート、五線譜にペンケースにマイボトルなど細々した荷物が次々とバッグに流し込まれていくがうまく入っていかない。弾き出されたスマートフォンが床を滑っていく。
「あー! スマホ!」
翔琉の椅子を片付けて戻ってきた燎の足に再生中のディスプレイがぶつかる。燎は一時停止を押してから画面をロックし、両面を軽く手で払ってから差し出す。
「後でちゃんと拭くんだぞ」
「あんがとー!」
ばちん。
「だから早いってユーキ!」
一気に暗闇と化した部室で翔琉が叫ぶ。
「もう荷物入れ終わっただろ」
「そうだけどさあ! 人の気持ち考えような!?」
翔琉の訴えに優貴は、
「馬鹿の気持ちは考えたくない」
と背を向けて廊下に出ていってしまう。
「バカがうつるから……てことか?」
「そういうこと。……コウに理解されると腹立つけど」
「ああ!?」
最後の小さな独り言を拾った光牙が噛みつき、大きな足音を響かせながら廊下へ飛び出していく。
「はー、ユーキは厳しいなあ……」
「ユウなりの気遣いなんだろう。下校時間を過ぎたら今度こそどうなるか分かったもんじゃない」
とぼとぼと足を向ける翔琉に燎が続いた。
「はい、全員集合」
翔琉と燎が廊下に出た瞬間、優貴はピシャンと扉を閉めて素早く鍵を回すと翔琉に手渡し、小走りで階段に向かった。
――全校生徒にお知らせします。昇降口の施錠時刻まであと…………
「あんのやろ自分だけ……!!」
光牙が拳を握り締めて力強く一歩目を踏み込むも、その目の先に優貴はいない。曲がり角の先からタンタンタンタンと小さく軽やかな足音が聞こえてくるだけだ。
「追うぞ!!」
「刑事ドラマか!」
光牙は猟犬のように鋭く飛び出すやいなや、瞬く間に角を切り返して階段に消えていく。
「それもいいんじゃないか? たびたびの時間オーバーで咎められるよりかは」
行くぞ、と燎も早足で後を追う。
「ええ……てか鍵返すの俺!?」
「今日はトモの日だ!」
階段の先から聞こえてきた答えに、翔琉はマジかよと肩を落とす。
――繰り返します。昇降口の施錠時刻まであと…………
「あーもう!! 今日は絶っ対ルバートに寄る!!」
最後の足音が階段を転がり落ちていく。
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