翔琉中心。お祝いの日に向けて。※お祝いムードの話ではありません。あふたー発売前に書いたので齟齬があるかもしれません。
その日は喜ばしい日ではなかった。
何度も予想した。足りない頭で何度も、色んなパターンを。二人にも相談した。それでも晴れやかな未来図は描けなかった。
どんなに自分達が心をこめて前向きな言葉をかけたとしても、結果を変えることはできない。あの熱意と責任感の強さを思えば簡単に気持ちを切り替えることなどできない。当然だった。だからこそどうにかしたかったし、だからこそどうにもできなかった。
打てる手が何も見つからないまま時間が過ぎていった。後輩たちに明るく振る舞い楽器を手にする。毎日毎日続けてきたたったそれだけのことが色を変えて心の半分を蝕んで、増えることも減ることもないままずっと胸の中に居座り続けた。
迎えた日は霧雨だった。
微かなノイズのような灰色の空気が病院の建物にもやをかける。広げたビニール傘が音もなく白っぽく滲んでいく。湿った風が首元を撫でると、体の奥まですうっと冷たい風が染み込んでいくようだった。
ただ、力なく笑った顔に青白い影が差していたのを覚えている。
一生、の言葉がこんなにも重くのしかかったことはなかったかもしれない。一緒に居続けることの意味。苦渋を味わう覚悟。一人の身に起こったことが何もかも均等に四人のものになってしまう現実。口にした時は当然のこととして頭にあって、だから大丈夫だ、こいつらなら一緒にやれると決断した。
なのに、これが現実だった。現実にしてしまったのは誰なのか。答えはとっくにわかっている。でもどうすればいいのかがわからない。どんな言葉を尽くしても届かない。家族の次の理解者は自分だと豪語できる自信があったはずなのに。
白い指が譜面をなぞり、切れ長の目が後輩の思考を読み取っている。
取り繕うのは苦手だと言い切っていたのに、自分よりよほど燎の方が落ち着いているように見えた。
パーカーの襟を掴んで首元を隠す。
「ユーキ。あのさ、来月……リョウの誕生日」
「ああ」
そんな風に、他力本願な一縷の望みに賭けるしかなかった。
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