(11)明日、撤収が済んだらあいつの墓前へ お題:祭りの後

SC創設トリオ。もしアンコン前に文化祭があったら。
※暗い話。インビジ1stで出てきた「あいつ」がトリオの元仲間で、以前病死していたという設定です。大丈夫な人だけ読んで下さい。



「……帰ろっか」
 ぽつりと漏らすような翔琉の提案に二人は小さな声で応じた。
 他に誰もいない部室をいつもの青白い蛍光灯が照らしている。外はすっかり日が落ちていて、真っ暗な窓の向こうから流れてきた冷たい夜の空気が皆の足元を浸している。
 燎は黙って立ち上がり、部室の窓を端から順に閉めていく。丸く浮かび上がるライトを辿って見下ろせば、グラウンドには見知らぬ生徒たちが走り回ったり大荷物を抱えて歩いたりしている姿が点々と見える。燎は錠前に手を掛けたまま、そこで黄色い灯りが長い影を作っているのを目で追った。
「リョウ」
 ふと声に気付いて視線を引き戻す。優貴の丸い目がまっすぐにこちらを見つめている。その蜂蜜色は誰かに影を落とすことはない。
「ああ」
 燎は再び窓に目を向け錠をはめ、厚いカーテンを閉める。もう誰の歓声も聞こえない。
 部室を見渡すと他の窓は全て同じように閉まっていて、出入口で待つ翔琉も優貴と同じような目線を投げかけている。
「とりあえずは明日……だな」
 全員が揃い、翔琉が改めて口を開く。
「さっきも聞いた」
 優貴が目を伏せて小さく唸り、トートバッグを肩にかけ直す。
「あー……そう、だった。ごめん」
「別にいい」
 うなだれる翔琉に優貴は首を振る。ぼうっと青白く照らされた前髪が重く揺れる。燎は一瞬迷ってから、床に落としていた視線を優貴の上靴にずらし、その背中をそっと二回叩いた。
「……じゃ、またあした」
「手はず通りに」
「ああ」

 ぱちん。
 二人の返事を合図に、翔琉が壁のスイッチを静かに押し込む。
 部室はいよいよ真っ暗闇になる。
 がらがらがら、かしゃん。