(25)タイトル未定 お題:眼鏡

SC2年生。このメンバーが近視だったらどうしよう、という妄想。視力そのほか全部捏造。



 ――ドンッ、ガシャン!
 突然響いた激しい音に、四人は驚いて部室の出入口を見た。
「おいおい、大丈夫か? 今すんごい音したぞ」
「怪我はないか」
 楽器のセッティングをしていた翔琉がトランペットをケースに置いて歩み寄る。燎も開きかけた楽譜を一旦閉じてピアノを離れた。
「すみません、ご心配をおかけして。大したことはないですから」
 大和は二の腕を手で押さえながら、先ほどぶつかったばかりの引き戸の枠に体を預ける。力なく返した笑みにはどことなく気まずさが漂っている。
「ならよかったけど、大和にしては珍しいな。そんなとこにぶつかるなんて……え、ええー!?」
 その目元にあったものに翔琉は大声を上げ、丸い目でまじまじと大和の顔を観察した。優貴も興味深そうに視線をやる。
「へえ。お前、目が悪かったのか」
「何つーか、意外だな。メガネ」
 光牙もペットボトルの蓋をきゅっと捻って閉め、しげしげと大和を見つめた。
「いつもはコンタクトですから。それに、こういうのはわざわざ口にすることでもありませんし。今日眼鏡をかけているのはたまたまなんですよ」
 いつもの涼しさを取り戻した大和はバッグを肩にかけ直して練習の準備に取り掛かる。
「さっき目にまつ毛が入ってしまいまして。幸いコンタクトを外したらすぐにまつ毛は取れたんですが、今度はそのコンタクトがうまく入らなかったんです。なのでやむを得ず」
「なるほど。俺も大和の近視は初耳だが、そういうことなら気付きようがないな。やはり急に眼鏡に変えると調子が狂うものなのか?」
 大和と同じクラスの燎は頷いて譜面台に戻り、改めて楽譜を広げる。
「ええ。同じ度数に合わせていても、視野や平衡感覚は全く違いますね。個人差はあるかと思いますが。神条くんも何かと大変じゃないですか?」
 大和の視線がちらりと部室の隅に投げかけられ、優貴がピンクの癖毛をぶわっと逆立てる。
「花粉症の時のお前大概やべーもんな」
「うるさい。視力二・〇はすっこんでろ」
「んだと!? 目えいいのは長所だろうが。けなされる覚えはねーよ!」
 いつものように小競り合いを始めてしまった二人に大和はまあまあと苦笑いを浮かべ、その場からなかなか動かない翔琉に顔を向けた。
「智川くん。そういう風にじっくり見られても、何も出てきませんよ?」
「いやー、ごめんごめん。新鮮だったからつい見ちゃってさ。やっぱすごいわ。似合うもん。インテリー! って感じ。よっ、武宮先生!」
「確かに、教鞭が似合いそうだ。……大和、ふらつくようなら今日は座って吹いたらどうだ。体幹がしっかりしてる大和なら問題ないと思うが」
 囃し立てる翔琉に燎は同調しながら椅子を差し出した。
「ナイスアシストリョウ! なら練習内容もちょっと変えとくかー」
「ありがとうございます。たかが眼鏡一つで仰々しい気もしますが、せっかくなのでお言葉に甘えてお借りしますね」
 大和は礼をしてゆっくりと腰を下ろす。それから、
「演奏中に座ろうとして転んではいけませんからね」
 と付け加えて笑いを誘った。