買い物を満喫してきたテルルん先輩。
クッションの脇にショッパーを置き、スプリングコートを脱いでハンガーに掛ける。いいものを買った甲斐があった。上質なアイボリーの生地には未だに惚れ惚れする。本当は元々持っていたライトベージュのものと交互に着るつもりだったけれど、結局この春はこればかり羽織ってしまった。毎日同じ服を着るのは性に合わないのに、朝の気分に任せて選ぶとどうしてもこうだ。気づけばもうすぐ五月。このままシーズンオフを迎えるわけにはいかない。明日は必ず、と決意してクローゼットを見やる。
ローテーブルにティーセットを並べている間に砂時計がさらさらと流れ落ち、タイミングを告げる。ポットからコゼーを外し、ストレーナーを通してゆっくりとカップへ。熱々の紅茶がホワイトのカップを満たし、周りに描かれた花に囲まれていくのはいつだって気分がいい。自分ひとりの静かな部屋に、茶葉の香りが広がっていく時間も好きだった。
何か音楽をかけようかしらと考え、やっぱり今はやめておこうと決めクッションに腰を下ろす。今は静かに過ごすのが気分だ。時間をかけて背伸びをし、足先にも神経を通わせて丁寧に動かす。今日は久しぶりのオフ。つい気持ちが盛り上がり、完璧に仕上げた全身で気持ちの赴くままに店を巡ったツケが回ってきたみたいだ。でも心地良い疲労感でもある。ショッパーから新作のバスソルトを取り出してテーブルに置き、スマートフォンで写真を撮る。今夜はこれにしよう。
別のショッパーからフロランタンを取り出し、空のデザート皿に二枚斜めに置いてこれも写真を撮っておく。頭の中にすぐSNSのタグが並び始める。とてもいい調子だ。角度を変えて紅茶と共にもう何枚か撮影。加工は後にしましょう、とスマートフォンをテーブルに伏せて紅茶を頂く。フロランタンのカリッとした香ばしさと濃厚な甘み。それに負けない紅茶の香り。渋みもちょうどいい。二杯目にミルクを入れるのがもう楽しみになってしまう。
手を丁寧に拭いてから三つ目のショッパーへ。買いそびれていた新作のアイカラーとアイライナーに、夏の日焼け止め。インフルエンサー注目のホワイトニングマスクも運良く買えた。カーペットにふんわり広げたストールの上に並べて撮影。夏はどうしても汗や化粧崩れを思うと気が重くなってしまう。でもそんな夏のための買い物はどこか戦いの準備のような、もしくは大きな舞台に立つ前に気合いを入れる時のような気分がして、決して嫌いではない。それに推しのライブも待っている。
一番大きなショッパーのテープを剥がす。参戦服というのは上手い言い方だなと思う。気が早いと言われそうだけど、承知の上だ。いつ何を買うかは私が決める。その時の気分だとしても。
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