(53)ようこそリックのスペシャルバースデーステージへ! お題:安藝月玲玖の誕生日

一度炸裂すると止まらない、華麗にして絢爛なるリックワンマンショー。




「ハローーーーッエブリワン!! ようこそリックのスペシャルバースデーステージへ! 今日という輝かしい記念日に、忙しいキミたちがこうしてボクのために集まってくれたことをボクは……ボクは……うっ、ううっ」
 玲玖は部室の天井を突き破らんばかりに高い声を上げたかと思うと、突然肩を震わせた。廊下側の端の席で輝之進が小さなため息をつき、反対側の端の席で奏斗が露骨に体の向きを変え窓の外を眺め始める。
「あのー、リックさん。嬉しい気持ちはよーくわかりますけど、そろそろ次進めてもらえます?」
「そーそー、尺足りないですよー。ケーキが待ってるんですから」
 拓夢が困った笑顔で声をかけ、煌真と蒼弥が続く。
「そうだぞ! 男なら晴れ舞台は堂々と! って言ってたのはお前だろ? 頑張れよリック」
「ソーヤ! 今ボクをリックと! ああ、リックと呼んでくれたね!? ソーヤ! ああ! 今日は何ていい日なんだ! ボクはこの世に生を受け、そしてこの星屑旅団の輝く星となり皆を導く使命を授かったことを本当に誇りに思うよ!! ソーヤ!!」
 玲玖は着火したロケット花火のように一瞬で全身に生命エネルギーをたぎらせ、軽やかにステージ――正確には傷まみれの古びた教壇――から踊り出た。背筋をピンと伸ばし――正確には、輝之進が眉をひそめるほどに反らしすぎではある――ミュージカル俳優のように手の指先から足の爪先まで神経を行き渡らせた、実にしなやかかつ優雅で華麗なる動きで蒼弥に歩み寄った。そして一度目を閉じ、両手を広げ天を仰ぎ、この世の万物に感謝を捧げた。それからやっと蒼弥と向かい合い、熱い友情の握手を求めた。蒼弥は突然の感謝の祈りに一瞬戸惑いこそしたが、玲玖の求めに一切ためらわず、笑顔で右手を差し出してがっちりと握手を交わす。
「俺もお前と一緒に音楽やれて嬉しいよ」
「ソーヤ! ボクもさ!! ありがとう、本当にありがとう!!」
 玲玖は握った手を上下にブンブンと振ってから離し、また同じような歩調でステージに舞い戻っていった。ロランはにこやかに微笑み、のんびりと脚を組み替える。その隣で新は壁の時計をチラリと見上げ、そわそわと座り直した。
「みんな! 改めてお礼を言わせてくれ! ボクはキミたちと共にこの星屑旅団で夢を形にできることを心から幸せだと思っているよ! これからも旅団で燦然と輝くトップスターとしてキミたちを率いてみせようじゃあないか! ボクらのゆく先には時に険しい道もあるだろう。でも! 大丈夫! ボクがいる限りキミたちは安心さ! どうか大船に乗った気持ちで……そう、ロイヤル・セレブリティ・リック号とでも呼んでくれたまえ!!」
 突然の船出に、それまで舟を漕いでいた奏斗がげっほげほと咳き込んだ。煌真と拓夢が隠しもせず笑いだし、
「ほなリックさん、出航しましょ出航!」
「んでケーキ食べましょ!」
 と声を上げる。
「ありがとう! ありがとうみんな! じゃあ記念すべき船出にボクの音楽を捧げよう! 聴いてくれ!」
 玲玖は今日一番のハイトーンボイスを披露し、ピックをつまんだ手を高らかに掲げた。玲玖は七つの客席を見回し、全員の視線が自分に集まったことを確認すると、幸福に満ちた笑顔を浮かべた。
 そして孤高のギタリストリックに姿を変えた。