リーダー翔琉といえどもおじいちゃんにはどうしても勝てないらしく……? +SC初期メンカルテット。
「なあ、じいちゃん。いいだろー? 俺もう高校生なんだし」
「ダメなものはダメだ。お前にはまだ早い」
「何でだよー! じいちゃんのケチ!」
「おーおー、ケチで結構。俺からしたらお前はまだまだガキンチョだ。ゴネてる暇があったら練習してこい」
「くっそー!」
翔琉はカウンターに突っ伏し、脚をじたばたさせた。翔琉の祖父は拭き上げたコーヒーカップを全て棚に並べ、スプーン磨きに取り掛かった。いつものスムーズな手さばきだ。
「これで何回目だよ。いい加減聞き飽きたんだけど」
優貴は氷たっぷりのアイスコーヒーより冷たい視線を翔琉に浴びせてから、弦のチェックに戻った。燎も、ピアノの椅子の高さを調節しながら翔琉を見やる。
「そろそろ諦めたほうがいいんじゃないのか。おじいさんにもお考えがあるんだろう。あまり困らせるのは良くない」
「翔琉ー、こっち終わったぞ」
早々とセッティングを終えた光牙は既にドラムスティックを手にしていた。スティックをくるくると回し、手に馴染む感触に頷く。
店内に軽やかなハイハットとスネアが流れ始めた。翔琉は半分溶けたアイスのようにずるりと椅子から下りる。
「はあ……今日もダメだった……」
「ダメでもクソでもいいから、練習はシャキッとしろよ」
翔琉はだらりとぶら下げた手で相棒を拾い上げた。その背中を、光牙が音出しをしながら励ます。
「トモのことだから、どうしてカレーのレシピを教えてもらえないのか大方予想はついてるんだろう?」
「そりゃあね? 分かってるよ。俺にだって。カレーは命みたいなもんだし」
「確かに、カケルの血管にはカレーが流れてそうだな」
俯いてトランペットに愚痴をこぼす翔琉に、優貴が辛口な冗談をよこす。
「カレーが血液か。血管が詰まりやすそうだな」
「辛そうだな」
「お前らなあ! 言いたい放題言いやがって……はあ、愚痴る時間もないのかよ~」
翔琉は勢いよく三人を振り返る。全員が平気な顔だと知ると、早くも電池切れとばかりにがっくりと肩を落とした。
「ない」
「時間は有限だからな」
「食い足りねんだろ。これ終わったらカレー食えカレー」
「わかったよ! あーもう! その代わり、今日は気が済むまでやるからな! んでカレー食べる! じいちゃん、大盛りで予約よろしく!」
翔琉はステージからキッチンに向かって声を張り上げた。翔琉の祖父は、布巾の中のピカピカのカレースプーンから顔を上げ笑顔で応じた。
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